伊豆早生　いずわせ

特徴

　農林省東海近畿農業試験場東海支場で1955年に富有に興津1号を交配して育成した交雑実生のなかから選抜された個体（旧系統名：IIiD-15）。1962年から茨城県から佐賀県に至る17か所の各県試験場で系統適応性検定試験が行なわれた。その結果，優秀性が認められ，1970年に命名登録された。なお，興津1号（旧系統名：A-4）は1938年に農林省園芸試験場（興津）において晩御所を自家受粉した実生のなかから選抜された完全甘ガキの系統。

樹姿は開張性と直立性の中間で樹勢は弱い。枝の勢いも弱くなりやすいので，側枝の切返しをかなり強く行なわなければならない。萌芽・展葉期はカキ品種のなかでは中程度の時期で，「富有」よりも早い。

雌花は非常に多くつき，隔年結果性はない。開花期は中程度の時期である。遅れ花も多い。雄花は着生しない。新梢の低節位まで花が多くつくことから，摘蕾労力を軽減するため，結果母枝の切詰めも行なわれる。

単為結果性は低く，安定生産のためには受粉が必要だが，種子形成力も高くないため，早期落果が多い。授粉樹を密に植えるとともに，ミツバチなどを放飼するとよい。また，6月に新梢が二次伸長しやすく，果実と新梢の養分競合が起こり，生理落果につながるので，二次伸長しかけた芽をかくとよい。人工受粉を行なう場合は，希釈度の低い花粉（5倍程度）を用いて種子形成を促すとよい。

6～7月の日射量が多い年には単為結果力が向上し，摘蕾が適度に行なわれていると，無核の果実も半数近く実止まりする場合もある。一般に，後期落果性はないが，秋季に高温・多雨の年などに樹上軟化を生じることがある。

樹勢が弱く，多く結実させると樹が弱る傾向が強い。収量性は高くなく，一般に10a当たり1.5t程度の生産力。

「西村早生」よりややおそい時期に成熟する早生の完全甘ガキ。一般に10月上中旬が収穫期である。果実の大きさは中程度で，「富有」よりも小さく，平均220g程度である。日持ち性が短く，7日程度しか日持ちしない場合が多い。果皮は本来は赤いが，日持ち性が短いので，橙黄色で収穫される場合が多い。果形は乱れる傾向があり，玉揃いは悪い。糖度はあまり高くなく，一般に14～15度程度であるが，果汁がやや多く，肉質も富有より緻密で，やや軟らかく，食味は良好。

早生のカキだが，夏秋季が高温の地方でないと渋残りする傾向がある。このため，むしろ「富有」よりも適地が狭いといえる。へたすき性がややあり，このことがいっそう日持ちを短くさせている。果頂裂果性はわずかにあるが，大きく裂果する果実はほとんど生じない。

1970年の登録品種で、当時は最早生の完全甘柿として注目されたが、不完全甘柿だがさらに収穫時期の早い「西村早生」誕生、そして完全甘柿「早秋」の出番となりその役目を終えた。

へたすき性、汚染果の発生、日持ち性の短さなどから、極早生品種としての役割は終わった。