夕紅　ゆうべに

特徴

来歴　松本早生富有にF-2の花粉を交配して育成した農水省果樹試験場（現独立行政法人農研機構果樹研究所）の育成品種である。F-2は次郎に晩御所を交雑して得た実生から選抜された完全甘ガキの系統である。1989年より31か所の試験研究機関で行なわれたカキ第4回系統適応性検定試験に安芸津11号として栽培試験を行なって特性を検討した結果，優秀性が認められて選抜され，1997年に夕紅と命名，2000年に品種登録された。

樹性，着花・結実性　樹勢はやや強い。樹姿は開張と直立の中間である。枝の発生密度は中位であり，発育枝は長い。雄花は着生せず，雌花のみを着生する。雌花の開花期はおそく，富有とほぼ同時期である。雌花の着生程度は富有より少ない。雌花の少ない年は収量が少なくなる場合がある。単為結果力が強いので早期（6～7月）の生理落果は少ない。一方，種子形成力はきわめて低い。平均種子数は1個程度の場合が多く，無核果が多く結実する。後期落果性があり，年と場所により8～9月に果実が生理落果しやすい。

　雌花の着生がやや少ないという性質は，摘蕾労力の軽減にはよい。しかし，少なすぎると，収量が少なくなる。隔年結果現象を生じさせないように前年の着果量を適正にし，剪定にあたっては着花を確保するべく発育良好な結果母枝を残すよう心がけ，結果母枝数もやや多めに残すことが有効である。

果実特性　富有とほぼ同時期に成熟する晩生の完全甘ガキである（第6図）。果実の大きさは富有とほぼ同程度である。果形は扁平である。きわめて果皮色が赤いのが特長（カラーチャート値で8程度）で，汚損果の発生も少ないため，外観が優れている。果皮色が進んだ時期に収穫しても日持ち性もよい。へたすき果，果頂裂果の発生は少なく，富有と同程度である。汚損果の発生率はほぼ富有と同程度である。肥大しすぎた果実は果皮のしわの部分が裂ける場合がある。

　肉質の粗密は富有よりやや緻密で，適熟果の果汁はやや多く，糖度は17.5度程度で富有よりやや高い。食味は良好である。

果皮が著しく赤く、汚染果の発生少ないので、外観美麗。へたすき果の発生率は少なく、糖度は平均１７.５％と高い完全甘柿。単為結果性が強いので整理落果少なく、平均種子数が０.８個と少ない。