平核無　ひらたねなし

特徴

別名　八珍，庄内柿，おけさ柿

来歴　新潟市秋葉区古田南1336番地の川崎氏の宅地内にある古木（樹齢250年程度と推定されている）が原木である。

　カキは一般に6倍体（2n＝90）だが，この品種は9倍体（2n＝135）であるために，受精した胚が退化し，一般に無核果となる。通常は，配偶子をつくる減数分裂が行なわれ，還元配偶子（n＝45）同士が結合して2n＝90の6倍体の子が生じるが，この9倍体品種は非還元配偶子（2n＝90）と還元配偶子（n＝45）が結合して生じたと考えられている。

樹性，着花・結実性　樹姿は開張性と直立性の中間で，樹勢は強い。新梢は太く，節間はやや短い。負け枝は比較的生じにくく，枝を水平に伸ばしやすい。側枝は下垂しにくく，切返しによる側枝の維持が容易である。萌芽期は非常に早い品種であり，晩霜害を受けやすいので，適地の選定が重要である。

　雌花はつきやすく，隔年結果性は小さい。開花期はカキのなかでは最も早い部類に属する。雄花は着生しない。単為結果性が高いため，授粉樹は一般に不要である。後期落果性はない。偽単為結果性（受精しても胚の発育が途中で停止するために無種子となって結実する性質）があり（傍島ら，1975），退化する前の胚によって結実力が増大するためか，受粉された果実のほうが早期落果しにくい。

　結実性良好の豊産性品種であり，一般に10a当たり3t程度生産される。しかし，樹勢が強すぎて樹が暴れていると生理落果をかなり生じることがある。

果実特性　不完全渋ガキだが，種子が退化するため，一般に無核であり，果肉に褐斑がない。中生の品種で10月下旬～11月上旬が収穫期である（安芸津）。果実の大きさは中位であり，富有より小さい。果皮色は橙黄色で赤くない。樹上での汚損果は非常に少ない。糖度は一般に14度程度であり，高くないが，肉質は緻密で，きわめて柔軟多汁な状態で消費され，食味は優れている。日持ち性は，渋ガキ品種全体のなかでみると，優れている品種である。

　CTSD炭酸ガス脱渋が広く行なわれている。エチルアルコールによっても脱渋し，古くからアルコール脱渋も行なわれてきたが，汚損果が発生しやすく，軟化も生じやすい。

　へたすき性や果頂裂果性はない。条紋は発生しない。チャノキイロアザミウマに果実が加害されやすく，この防除が重要である。粉質性が少ないため，干柿としても品質が優れている。

枝変わり品種　熟期が約2週間早く他の特性が同様である刀根早生が1980年に品種登録され，それ以後，急速に栽培が拡大した。また，熟期が約2週間早い杉田早生もあるが，樹勢が弱くて生産性が劣るため，ほとんど生産されていない。そのほか，果実が300g程度と大きくてやや後期落果性があり枝が屈曲する大核無，果形がやや腰高で肉質にやや粉質性がある孝子丸，枝梢の短いこさどがき，早生の佐渡早生，石橋早生などがある。刀根早生の枝変わりとして，刀根早生よりさらに成熟期の早い中谷早生が2003年に品種登録された。

生産状況　平核無は山形・和歌山・新潟・奈良県を中心に広く栽培され，3,218ha（2004年）で栽培されている。刀根早生は和歌山・奈良・新潟・山形県など2,712ha（2004年）の栽培があり，ハウス栽培も行なわれている。大核無22ha，中谷早生12haの栽培がある（2004年）。

八珍、庄内柿、おけさ柿とも呼ばれる。この品種は九倍体のため一般に単為結果して無核果となるので受粉樹は必要ない。豊産性品種で、反当り３ｔ程度生産。和歌山の「種無柿」として有名。