西条　さいじょう

特徴

来歴　広島県東広島市西条付近が原産であると考えられている。1619年には浅野氏が広島移封とともに西条柿奉行をおいたとされており，当時すでに重要な生産（干柿）が行なわれていた。この品種は，東広島市寺家の長福寺の縁起に，同寺に1239年に植えられたものが始まりであると書かれているが，実際にはそれよりも200～400年古くから栽培が行なわれていたと推定されている（磯田，1982）。このように日本でカキが栽培され始めた初期のころからの非常に古い栽培の歴史をもっており，中国・四国地方に広く分布している。そして，果形，果実重，熟期などを異にする多くの系統があり，それぞれの地方の在来品種となっている。そのうちの多くは枝変わりによって成立したのではないかと推定されている。

樹性，着花・結実性　雄花は着生しない。雌花の量は中程度である。樹が落ち着くまでは着花は少ない。多くの系統があるが，一般にかなり単為結果性があり，なかには無核で毎年結実する系統もある（広島県三原系）。しかし，偽単為結果性のあることも報告されており，結実を安定させるためには一般に授粉樹のあるほうが望ましい。一般に，種子形成力は高くない。後期落果性がややある。とくに，発育後期になって樹上軟化する場合がある。果実も風害にはあまり強くなく，台風害を受けると，樹上軟化したり，落果しやすい。

　樹姿は直立性で樹勢が強いので，大木になる。幼木期には花の着生が少なく，一般に結実期に入るのが遅い。一般に，早期に結実させるためには，6月からの適期の誘引が必要である。整枝もまず十分に樹を大きくするようにすることが必要で，変則主幹形が適当である。枝の太さは中位で長く，節間も長い。葉は大きく光沢があり，下垂する特徴があり，遠くから見ても一見してこの品種であると見当をつけることができる。萌芽・展葉期は早い。台風によって葉が飛びやすい。

果実特性　完全渋ガキの品種である。熟期は10月上旬に成熟する系統から11月下旬の系統まである。一般に，果実は小さく100～200gの系統が多く，側面に4条の溝があり，果色は緑橙黄色で果実に赤みがない。汚損果が発生しやすい。破線状の汚損に加え，墨を塗ったようになる雲形状汚損も生じやすい。チャノキイロアザミウマの被害も生じやすく，適期の防除が必要である。

　果実の外観は不良であるが，肉質が緻密で軟らかく，適期には多汁であるうえ，糖度が18度程度と高いため，食味は非常に優れている。ドライアイスによる炭酸ガス脱渋が一般的で，一部にアルコール脱渋が行なわれる。日持ち性が劣るのが欠点である。もともと果頂先熟性の果実であり，果頂軟化も起こしやすい。また，とくに水田転換園や谷間の園地では，軟化果実が生じやすい傾向がある。へたすき性や果頂裂果性はない。干柿としても肉質が粘質で糖度が高く，品質は優良である。

主要系統　主産県の鳥取県では主として早生系統と晩生系統がある。島根県で生産が多いのは出雲型と呼ばれる晩生系統とB型と呼ばれる早生系統である。

生産状況　古来，干柿としての生産が多かったが，現在は脱渋したさわし柿としての生産が多い。鳥取・島根県を中心にドライアイス脱渋によって出荷されている。657ha（2004年）の栽培がある。

昨今では、干柿ではなく、脱渋したさわし柿として販売される。さわし柿の品質は糖度１８度と高く、肉質が粘質で優良品種である。一般にドライアイス脱渋法が用いられる。