肥のあけぼの　ひのあけぼの

1983年現・熊本県農業研究センター果樹研究所において，楠本早生に川野ナツダイダイの花粉を交配して得られた珠心胚実生個体から選抜され，1995年に品種登録された。

結果性は樹の生育が旺盛なため，結果始めは他の極早生温州よりややおそい。結果期に入ると枝梢，葉数の発生が多いことから，連年安定した結果が望め，単位容積当たり収量は多い。

果実の大きさは興津早生と同程度，果形は果形指数138，「興津早生」より扁平であり玉揃いは良い。果頂部花柱痕には特徴的に突起（へそ）を形成する果実がある。果面は油胞の分布密度が高く，凹凸も少ないため滑らかである。果皮の着色は9月上旬頃に始まり10月中旬頃に完全着色する。果皮色は濃い赤橙色を示し，同時期の他品種と判然と区別できる。

糖度は楠本早生に比べて高く，10月中旬には11～12度台に達する。酸は楠本早生，興津早生に比べ早期より低く，育成地では10月中旬に1％となる。浮皮の発生は比較的少なく，採収出荷は10月中旬頃より行なう。

本種の特性を発揮するには，比較的減酸の早い海岸域などの温暖な地帯への栽培が必要で，減酸の遅れる地域や標高200m以上の場所などは適地として十分ではない。糖度が高く食味の良い果実を生産するには，土壌が深く排水良好で日当たりの良い南面または東南面の傾斜地が望ましい。

枝梢の伸長が旺盛のため樹冠拡大は容易だが，結果始めがややおそいことから，枝梢の誘引や摘心などにより落ち着いた枝梢の確保を図る。結果期以降は果実品質向上を図るため，生理落果が終了する頃よりシートマルチを行なうが，被覆前には内成り果，すそ成り果を中心に摘果を行ない，果実の初期肥大を促進させる。

浮皮の発生が比較的に少ないことから，特徴的な果皮色を生かし，食味の優れた果実を生産するには完熟まで樹上に置くことが望ましい。

熊本県で育種され、1983年登録され、期間満了した極早生の代表。各県とも、この品種を越えることを育種目標にされる程、良くできた品種。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

葉数の発生が多いので、連年安定した結果が望め、単位容積当たり収量は多い。早期出荷に努めれば、浮皮は少ない。糖度の高さと酸味との調和の良さがこの品種の特徴。

早くから色付き始め、それに伴い糖度ものる。極早生品種としては考えられない時期の着色と糖度の高さ。熊本県の推奨品種を是非。実際の畑では、糖度14の果実にも遭遇した。