愛宕柿　あたごがき

特徴

来歴　愛媛県西条市（旧周桑郡）の原産である。古くから栽培されてきたものであるが，現在，栽培されている系統は，1913年に櫛部国三郎が選抜した系統である。

樹性，着花・結実性　樹勢は強い。樹姿はやや直立性で，水平な亜主枝はつくりにくい。萌芽・展葉期はおそい品種である。葉色は濃く，秋季に温度が低下しても緑色を保ち，落葉期がおそい品種である。

　雌花はつきやすく，雄花は着生しない。開花期はカキ品種のなかでは中程度からややおそい時期である。

　きわめて花芽分化がよく，隔年結果性はほとんどない。富有などでは，結実過多状況のときに，結果した枝や下垂した弱った枝を結果母枝とすると花がないが，この品種ではきわめてよく花がつく。

　へたすき性があり，これを防ぐためには，一般に水平か下垂した弱い結果母枝を用いて果実への水分供給を緩和させるとともに，多くの果実を結実させてやや小果とする。したがって，新梢の伸びは短い。葉果比10程度で多く結実させ，通常，10a当たり4t程度を連年生産することができる。

　この品種の栽培方法は，旧年枝部分の多い，水平かあるいは下垂した弱い枝を利用するものであり，富有など一般のカキの栽培方法と考え方がほとんど逆である。

　受粉が行なわれれば，ある程度種子は形成されるが，単為結果力が高く，結実性は良好である。後期落果性はない。きわめて豊産性の品種である。連年の多収に耐えることから，葉の光合成能力が相当高いことが推定される。

　炭疽病にはやや強い。結実過多を続けると，胴枯病が発生し，主枝，亜主枝単位で枯れ込みが生じるので注意が必要である。

果実特性　11月下旬から12月上旬に収穫される晩生の完全渋ガキである。晩生品種なので，暖地でないと十分に成熟しない。果色は橙黄色で，あまり赤くない。富有と同様の管理をすれば300g以上の大果になるが，へたすき果が多発する。したがって，上記のように多く結実させて230g程度の果実重にする。果頂裂果性はない。条紋はほとんど生じない。チャノキイロアザミウマの被害は少し生じる。

　肉質は緻密だが，やや粉質化する傾向があり，果汁が多くなく，肉質の硬さは中程度である。糖度も16度程度で高くない。品質的には中程度の品種で，とくに優れているわけではない。しかし，最晩生であるとともに日持ち性が非常に優れ，他のカキのない時期に出回るうえに，非常に豊産性であることから有利に生産されてきた。

　一部は低温で貯蔵され，2月ごろまで徐々に出荷される。脱渋は困難で，炭酸ガスとアルコ-ルが併用される。脱渋後の果皮の黒変が起こりやすい。近年はこれを防止するため，愛媛県では炭酸ガスとエタノール発生剤を封入したプラスチックフィルム個装により出荷されている。

生産状況　愛媛・徳島両県を中心に369ha（2004年）の栽培がある。

愛媛県西条市の原産で、非常に古くから栽培されてきた品種である。雌花がつきやすく、雄花は着生しない。花芽分化は極めてよく、隔年結果性はほとんどない。
受粉が行われれば、ある程度の種子は形成されるが、単為結果力が高く無受粉でも結実性は良好、後期落果性なく、極めて豊産性。富有と同様の摘果をすれば300g以上の大果になるが、へたすき果が多発する。したがって、摘果せず多く結実させて230g程度の果実重にする。 晩生品種なので、暖地でないと十分に成熟しない。つまり、暖地で、放任栽培すれば、隔年結果無し、超豊産性、摘果の必要無し。このように、手間いらずの品種だから未だに植えられている。

　品質的には中程度の品種。しかし最晩生であり、日持ち性が非常に優れ、他に柿が無い時期に出荷でき、非常に豊性なので、経済的に有利。干柿にもなる。