新秋　しんしゅう

特徴

来歴　興津20号に興津1号を交配し，育成した交雑実生のなかから選抜された独立行政法人農研機構果樹研究所（旧農水省果樹試験場）の育成品種である。1983年より安芸津1号の系統名で，35か所の国公立試験研究機関で系統適応性検定試験が実施された。その結果，ハウス栽培用としての優秀性が認められ，1991年に品種登録された。露地栽培では果実の汚損が発生しやすく，その部位から軟化するため栽培が困難である。

　なお，交配親は，両方とも農林省園芸試験場（興津）で育成された実生のなかから選抜された個体であり，各地の試験場で行なわれた地方適否・特性検定試験において種々の欠点から品種登録にまでは至らなかった系統である。興津20号（旧個体名：ロ-19）は袋御所に花御所を交配した交雑実生である。

樹性，着花・結実性　樹姿は開張性と直立性の中間で樹勢は中位。新梢の節間が短くて新梢がやや短い。萌芽・展葉期は，カキ品種のなかではやや早いほうであり，西村早生より遅く，次郎や伊豆より早い。傷口の癒合性，陰芽からの新梢の発生のしやすさは中程度である。新梢の栄養生長と果実生長の競合が比較的生じやすいので，長大な結果枝の果実は小さくなる傾向が強い。したがって，25cm以下の結果枝に結実させるほうがよい。チャノキイロアザミウマの被害は観察されていない。

　雌花はつきやすく，隔年結果性は小さい。雄花は着生しない。開花期はカキのなかではやや早く，西村早生と伊豆の中間である。単為結果性がやや高く，種子形成力も中程度であるので，生理落果は少ない。通常の栽培では，後期落果性はない。

果実特性　露地では一般に10月下旬が収穫期の完全甘ガキ品種である。果実重は一般に250g程度であり，伊豆より大きく松本早生富有並みだが，管理のしかたにより，あるいはハウス栽培ではかなり大果になる。果皮は赤くなく果頂部のカラーチャート値も5.5程度である。完熟果としては，果底部のカラーチャートが5程度が収穫適期である。

　甘味は高く，赤道部の糖度は一般に17～18度程度だが，果頂部と果底部の糖度差が大きく，果頂部の糖度は赤道部より2度程度高い場合が多い。また，完熟させると20度を超える果実も多い。このように糖度が高いうえ，肉質は緻密で，完熟すると果汁もやや多いため，食味がきわめて優れる。早取りすると，果汁が少なく糖度が高くないので注意が必要である。脱渋性は富有よりやや劣り，夏秋季が高温の地方でないと渋残りする傾向がある。

　へたすき性は少しあるが，富有よりは小さい。ただ，へたが小さく，やや反っているため，小さいへたすきが目だちやすい。果頂裂果性が少しある。これは通常は問題にならないが，大果になった場合には，かなり大きな裂果になる場合がある。

　最大の欠点は汚損果が生じやすく，汚損部位から軟化しやすいことである。汚損は降雨によって誘発される。下向きの果実や葉の陰になって葉と接触している果実は汚損が起こりやすいので，摘蕾・摘果の時期にできるだけ上向きの花・果実を残すようにすることや，収穫前の時期に果実接触部位の葉摘みを行なうことが有効である。また，農薬散布はできるだけひかえるとよい。日持ち性は軟化を生じるような汚損程度の大きい果実では短いが，健全果では比較的長く，10～12日程度である。

　露地栽培では汚損果が多いので商品生産は困難である。ハウス栽培では汚損の発生が軽減されるうえ，加温による熟期促進効果が他の品種と比べて大きいので，ハウス栽培において有望視されて選抜された。一般に，1月加温で9月に収穫できる。

早生品種でありながら、糖度が非常に高い。結果量は多い上、隔年結果性が小さく毎年安定した収量。８月下旬から和歌山から出荷される加温ハウス品種として最も良質であると評価される。