輝太郎　きたろう　

特徴

　鳥取県園芸試験場で，農研機構と共同で育成された完全甘ガキ品種。中生で大玉の完全甘ガキ品種である宗田早生に，果樹研究所育成の完全甘ガキ品種である甘秋を交雑して得られた実生のなかから選抜された。

樹勢は中庸からやや強く，樹姿はやや開張性である。発育枝はやや長く太い。節間はやや短く枝の発生密度は「富有」よりやや多い。また，陰芽からの新梢の発生も容易で，側枝の形成は容易である。発芽・展葉期は「富有」と比べやや早い。

雌花の着生は多く，雄花は着生しない。開花期は鳥取県鳥取市河原町において5月中下旬で，「富有」と同時期である。

単為結果性・種子形成力は中程度であるが，形成された種子が生育途中でしいなになるものが多く見られる。前期生理落果は少ないが，樹勢の強い樹などでは8月に後期落果が見られることがある。また，種子の少ない果実には，果芯部分に空洞が発生し黒変するものが見られる。これらのことから，授粉樹の混植を推奨している。

早生の完全甘ガキである。成熟期は10月上旬（鳥取市）であり，「早秋」とほぼ同時期である。果実重は320g程度で，栽培管理によっては400g以上の果実の収穫も十分可能である。へたすき，果頂裂果，条紋はほとんど発生しないが，着色期以降収穫期にかけて降雨が多い年は果皮の裂皮，汚損が発生することがある。

糖度は16～17度程度で熟度が進むにつれ上昇する。果汁は多く，肉質はち密であるが，熟度が進むと果肉はやや軟らかくなる。へた部に青みが残っていると，やや渋味を感じる場合があることから，へた部の果色がオレンジカラーチャート値で5以上になってから収穫する。収穫果実の日持ち性は，収穫期の室温で10日程度である。

幼木期から着蕾は安定して多く，果実も大玉になりやすい。このため，着果過多による樹勢の低下に注意が必要である。また，台風が来襲しやすい地域などでは，枝折れ防止や果実のすれ果防止のため，枝吊りや誘引，摘葉が必要である。

2009年に公表され，当初鳥取県内のみで栽培されていたが，2018年から全国で栽培ができるようになった。現在のところ大きな産地形成に至っていないが，今後甘ガキ生産地を中心に普及が見込まれる。