ラ・フランス

特徴

ラ・フランスは名前のとおり，1864年フランスのクロード・ブランシェ（Claude Blanchet）が発見したもので，交配親は不明である。わが国へは明治36年に導入されたといわれている。近年，西洋ナシの増殖が全国的に盛んであるが，生食向けが急成長したのは，このラ・フランスのすばらしい香りと，まろやかな食味にある。現在，山形県を中心に全国の栽培面積の半分以上を占める基幹品種となっている。

樹勢は旺盛で直立性，枝はやや細く硬いため立木仕立ても容易である。結果期に達するのがやや遅く，隔年結果性がある。葉焼けは少ないが，輪紋病や胴枯病に弱い欠点をもっている。

果実の大きさは250～300gの中玉，果形は不正円形で表面が凸凹の場合がある。果皮色は緑黄色でサビが多く，外観は不良である。

果肉は黄白色，肉質は緻密で果汁が非常に多い。また，石細胞が少なく，独特の芳香があり，食味は現在の栽培品種中最も美味とされている。生食だけでなく，加工用にも適している。

この品種は追熟が完了しても果皮色の変化がほとんどないため，可食期の判定がむずかしい品種である。

山形県では満開後165日前後の10月上中旬が収穫期となる。予冷を2～5℃で10日間行ない，追熟は15℃か室温に約15日間程度で追熟が完了する。予冷後追熟させると無予冷追熟より追熟が斉一にすすみ，芳香にすぐれた高品質の追熟果が得られる。また，腐敗果の発生も抑えられるという利点もある。また，予冷を行なわずにうまく追熟を行なう方法として，エチレン処理による追熟法が実用化されている。250～500ppmで48時間処理することにより，追熟が促進され，予冷後追熟する場合より10日間程度短縮される。

生産力は「バートレット」に比べて低く，10a当たり3～4tで，結果過多になると小玉となり隔年結果も起こしやすい。このため，4頂芽に1果程度に摘果し，摘果時期が遅れないようにする。逆に過剰摘果をして大玉になりすぎると，香りが少なく大味となる。

授粉樹は，「シルバーベル」「ゼネラル・レクラーク」「バートレット」「ル・レクチエ」などが適するが，開花時期が西洋ナシのなかでは早い品種であるので，幸水や豊水などの日本ナシも適している。剪定は，若木のうちは枝数をできるだけ多く残し，強剪定を避けて花芽を確保する。立木仕立ての場合，幼木時は枝の発出角度が鋭角になりやすいので，枝を開かせるように誘引や添え木などを行なう。輪紋病や胴枯病に弱い品種であり，幼木時からの薬剤防除はもちろん，樹勢の適正化や肥培管理の徹底が必要である。貯蔵は収穫直後の果実を2℃に冷蔵することにより，60日まで可能である。なお，収穫が遅れたり，追熟温度が高いと果実に内部褐変が発生する場合がある。

追熟は常温で２０日。肉質は緻密で柔軟、果汁多く、糖度高く、冷蔵すれば翌年まで出荷可能。洋梨の７割はこの品種。