西村早生　にしむらわせ

特徴

滋賀県大津市坂本の西村氏のカキ園の生け垣内に生じた偶発実生である。この園は1926年に新植されたもので，富有を主にし，赤柿が混植されている。1960年に種苗名称登録された。

樹姿は開張性と直立性の中間で，樹勢の強い系統と弱い系統がある。原木は樹勢が弱く，繁殖後に変化が生じたものである。萌芽・展葉期が早い品種であるが，「平核無」よりはおそい。剪定跡などの傷口が癒合しやすい。

雌花と雄花を着生する。開花期は早い品種である。花はつきやすく，1結果母枝から生じる雌花数が多いために，強い母枝については切詰めを行なうことが有効な場合がある。

樹齢とともに雄花が多くなる。雄花は弱い枝に着生しやすく，樹勢が弱ると雄花が多くなり収量を確保できにくくなるので，樹勢の維持に努めなければならない。

いったん雄花を着生した枝は翌年も雄花を着生しやすくなる。雄花が多くなってきた場合，冬季の剪定時に，雌花数を確保したいために結果母枝を多めに残すように弱い剪定をすると，雄花を着生する弱い新梢ばかりが発生するようになって悪循環になる。このような場合は，雌花を着生する長い結果母枝だけ残し，雄花を着生した枝はすべて剪除する強い剪定を行なうとよい。翌年は収量が減っても樹勢が回復し，翌々年には正常な収量が得られるようになる。

種子形成力はかなり高く，単為結果力もある程度高いので，生理落果は少ない。不完全甘ガキなので，むしろ単為結果力が高いことが災いし，種子数の少ない果実も着果して脱渋不完全の果実が生じやすい傾向がある。　

雄花の花粉は発芽力が高くない。完全脱渋果の生産が不安定な場合には，ミツバチなどの放飼や人工受粉を行なったり，開花期が適合し，花粉活力の優れた他の授粉樹を栽植することが有効である。

早生の代表的な不完全甘ガキ品種である。一般に9月下旬から10月上旬が収穫期で，果頂部のカラーチャート値が6程度で収穫するのが適当である。平均果実重は220g程度に栽培されることが多い。果形は整っており，玉揃いも良好である。果梗は短い。一般に，糖度は15度程度。

一般に，4個程度の種子数で完全脱渋する。脱渋していない部位は褐斑がない。脱渋度を確かめるには，果実に強い光線を当てると褐斑のない部位だけ透過することを応用した甘渋判定器によって判定できる。脱渋不完全の果実は着色がおそく，果形も頂端が扁平なものが多い。ある期日を決め，それ以後に成熟する果実はすべて脱渋処理を行なうようにするとよい。収穫後の脱渋性は炭酸ガス，アルコールともに容易である。しかし，褐斑のない部位は肉質が粉質なので，脱渋しても食味が劣る。

へたすき性は小さい。果頂裂果性はない。へた片が枯れやすい。日持ち性は非常に優れる。汚損果発生を抑えるため，8月中下旬以降の農薬散布はできるだけひかえなければならない。

渋果が混入しやすく，甘渋の判別は労力がかかり，果実品質は優れないが，主要品種のなかでは最も熟期が早く，外観・日持ち性が優れ，生産性も良いことから，1970年代後半より80年代にかけて急速に栽植された。福岡・岐阜・愛知県を中心に710ha（2004年）の栽培がある。

主要品種の中では、最も熟期が早い甘柿品種。外観がすばらしく日持ち性に優れ、生産力が高い。ゴマ入り柿の代表。但し、渋果が混入しやすく、人口受粉や甘渋の判別に労力が掛かる。