飛龍台木　白川（金峰）ひりゅうだいぎしらかわ（きんぽう）

特徴

1974年（昭和49年）に現・熊本県農業研究センター果樹研究所において，青島温州にヤラハタンゼロの花粉を交配して得られた珠心胚実生個体から選抜され，1989年（平成元年）に品種登録された。

樹勢は青島温州より旺盛で，枝が伸長しやすい。高接ぎ樹は特に樹勢が強く，しかも初期の着花性が不良であるため，樹冠の拡大は早い。また，高接ぎ後結実するまで，先端以外からの新梢の発生が少ないため枝が伸びすぎ，無効容積が拡大しやすい。苗木からの場合は，若木のあいだも青島温州のような徒長的な枝の発生はほとんどない。枝の分岐角度が狭いため，生育初期には誘引による整枝を行なったほうがよい。珠心胚実生由来であるが，とげの発生はない。その他の特性は青島温州と大差ない。

果実の大きさは青島温州と同程度であるが，極大果はできにくく玉揃いが良好である。果形は扁平で青島温州より果面が滑らかで果皮もやや薄い。11月中下旬ごろには完全着色し，青島温州より10日ぐらい早く着色するため，12月中旬ごろの果皮色は濃い。

果肉の熟度も早く，肉質は柔軟で，じょうのう膜も青島温州よりやや薄く軟らかい。適した栽培条件ほど糖度が高くなりやすく，クエン酸は早く減少することから，年内から着色および食味とも良好である。果実のしまりは良いほうであるが，収穫期の11月中下旬以降も樹上におくと浮皮が発生する。

青島温州と同様に排水良好で，日当たりが良く耕土が深くない傾斜地で，高品質果実が生産される。

飛龍台では、樹高が低くなり、作業性が良好であり、トゲも小さく発生も少ないため、風によって枝や葉に傷がつきにくいと考えられる。さらに飛龍台では夏秋梢の発生比率が小さいことからも、栽培上問題となるかいよう病が発生しにくい樹相と考えられる。なお、飛龍台の１樹当りの収量は他の台木より少ないものの、樹冠容積当りの収量と果実形質はカラタチ台と同等であるため、栽植間隔や整枝法等について検討すれば、低農薬栽培や省力化に適した台木として利用できると考えられる。但し、飛竜台木は矮性台木なので、樹冠拡大を第一に考える。残根性なので、風害のある地域では倒木の可能性がある。

熊本県で1989年に種苗登録された品種。この白川の糖度13以上を「金峰」というブランドで販売している。「青島」より枝が強く、「青島」以上に着果が不安定で、隔年結果性が強い。但し、その果実は見事であり、糖度13以上の「金峰」ブランドを生む。よって、幣社では、極強の樹勢をコントロールする手段としての「飛龍台木　白川」のみとした。