にっこり

特徴

栃木県農業試験場が1984年に‘新高’に‘豊水’を交雑して育成した。1989年に初結実し，晩生で果実品質が優れていたために調査を継続した。1996年に第5138号として品種登録された。

成熟期は育成地で10月下旬～11月上旬である。果実は円形～楕円で，果皮の色は赤褐色である。年次によって有てい果の発生が多くなる。平均果重が800～1,000gの大果になる。果肉は白色で，肉質は緻密で多汁である。硬度は「幸水」「豊水」と同程度で軟らかく，糖度は12％程度である。酸味が「幸水」程度であり，晩生種としては食味がきわめて優れている。果実肥大の盛期（8～9月）に降雨が続くと裂果が発生することがある。また，「豊水」にみつ症が多発する年には果実の比重が低下し，ス入り果が発生することがある。果実の日持ち性は長く，常温で60日の貯蔵が可能である。

若木の間は樹勢が旺盛で，枝の伸長はよいが，結実が多くなると樹冠の拡大は緩やかになる。枝の発生はやや少なく，短果枝，腋花芽の着生もやや少ないが，短果枝の維持は容易であり，花芽は十分確保できる。開花期は早く，「新高」と同時期である。S遺伝子型はS5S9で，花粉の量は「新高」に似て少ないが，「幸水」「豊水」「長十郎」「新興」「あきづき」の花粉でよく結実する。黒斑病抵抗性で，黒星病，輪紋病などにも従来の防除で対応が可能であるが，えそ斑点病に対しては病徴発現性である。

若木時代は主枝先端を高く維持し，強めに切返しを行なう。成木期の側枝は4年程度で更新する。新梢の発生が少ないので，発生位置のよい新梢は予備枝として活用する。開花期が早いので「新高」の晩霜害が問題になる地域では十分な対策が必要である。腋花芽に着生させた果実は果形がやや乱れる傾向があるので，短果枝への着果を基本とする。着果数は樹冠専有面積1m2当たり6～8果とする。8月中旬～9月中旬に連続した降雨にあうと裂果が発生しやすくなる。果皮が赤褐色で収穫適期以前でも熟したように見えることがあるが，早どり果は甘味が少なくて品質が劣るので，専用カラーチャートを用いて果皮色による適期収穫を心がける。

平成25年10月27日、栃木県宇都宮市で大学の同窓会に出席。翌日、栃木県試験場に勤め、「にっこり」の育種にも携わった友人の案内で場内を視察できた。後日その友人より、電話が入り「にっこり原木（右写真）から採った穂木を販売する。」とのこと。早速申し込み２月に接木を行なった。

栃木県の国際観光地「日光」と梨を中国語で「リー」と呼ぶことより名づけられた。冷暗な環境に置いておくと、冷蔵庫無しでも正月まで保存が効くので年末、年始の贈答用に向く。

栃木県で「新高」に「豊水」を交配して育成し、1996年に品種登録された品種。果実は1.3kgもあり、果肉は柔らかく、糖度高く、酸味が少なく、果汁が多い。貯蔵性が良く、涼しいところだと約2ヵ月保存できることより、輸出用果物として脚光を浴びる。現在、マレーシア、インドネシア、シンガポール、フィリピンに輸出され、昨年は5番目の国として、ベトナムで試験販売された。東南アジアでは、丸くて、大きく、黄色い容姿が風水とマッチして「金運を招く果物」として、「スマイリングピア（微笑みの梨）」という商品名で売られている。

「新高」より大きく、甘い。この品種の特徴として、果実が大きい方が、糖度があがるので、果実肥大に努めること。貯蔵性が良く、常温３ヶ月間保存できる。輸出用品種としても一目。