新興しんこう

特徴

田野寛一氏が1932年に新潟県農事試験場園芸部において‘二十世紀’の放任受粉果から採取し，実生を育成した。1937年に結実した実生のなかから選抜し，1941年に命名して発表したが，葉や果実の形状などから‘天の川’との雑種と考えられていた。近年における遺伝子解析により，‘二十世紀’と‘天の川’の交雑から生じたことが確認された。

成熟期は関東地方で10月上～中旬ころで，「新高」よりおそい。果実は紡錘形で果皮の色は黄褐色である。平均果重は400g程度であるが，高接ぎの場合は700gにも達することがあり，大果になる素質を備えている。肉質は「二十世紀」よりやや粗いが，緻密で軟らかく，暖地産の果実では糖度も12％前後になり，品質は良好である。果実の日持ち性は晩生品種としては長いとはいえず，新潟地方では2月まで貯蔵可能といわれるが，暖地産果実の越年はむずかしい。

若木時代の樹勢は中程度で，枝の発生は多いが，6～7年生ころから急速に樹勢が衰えることがある。とくに結果過多になると急激に衰え，葉がモザイク状のウイルス様症状を呈する。潜在ウイルスの存在が確認されているが，これが直接の原因か否かは確認されていない。「二十世紀」と同様に短果枝の着生が多く，維持も容易で花束状短果枝を形成しやすい。開花期は「二十世紀」より2～3日早く，花粉は健全である。年次によって自家受粉で高い結実率を示すが，実用的には自家不和合性である。S遺伝子型はS4S9であり，「南水」「新星」とは交雑不和合であるが，ほかの主要な品種とは交雑和合性であり，授粉樹としての利用も多い。黒斑病や黒星病には強いが，晩生品種であるためにナシヒメシンクイの被害が多発することがある。

隔年結果性は見られず，豊産性であるが，結果過多にならないように注意する。生育期間中に降雨の少ない地域や砂丘地などでは花芽の着生が多すぎ，枝梢の生育が不良になりやすいので，剪定時の切返しを強くするなどして樹勢を強く保つ工夫が必要である。大果ではむしろ肉質が粗くなり，果形も不整になりやすい。極端な小果を除いて小さめの果実のほうが品質は優れる。

暖地では、越冬保存が難しいので受粉樹用。寒冷地では収穫後２ヶ月以上保存がきくので、お歳暮、お正月の進物としての有利栽培ができる。