あきづき　

特徴

1985年に農林水産省果樹試験場が162-29（新高×豊水）に‘幸水’を交雑して育成した。162-29はやや晩生の赤ナシで，大果で肉質が優れた黒斑病抵抗性の育成系統である。系統適応性検定試験の結果，品質が優れた赤ナシ品種としての特性があきらかになり，1998年に，なし農林19号として命名，登録され，2001年に第9401号として品種登録された。

成熟期は「豊水」と「新高」の間で9月下旬である。果実は扁円形で「幸水」に似る。有てい果が多数混在するが，肉梗は見られない。平均果重が500g前後の大果になり「豊水」よりやや大きくなるが，「新高」ほどには大きくならない。果皮が黄赤褐色で，中程度の大きさの果点が密に分布する。果心は短紡錘形で，心室数は多いほうであるが「幸水」よりは少ない。果肉は白色で，「豊水」と同程度の軟らかさである。「豊水」程度の甘さを示し，食味上は酸味を強く感じることはない。水浸状障害（みつ症）およびコルク症状の発生が認められる。水浸状障害は熟度が進んだ果実に多いこと，窒素を施与しない処理で多くなることが報告されている。一方，コルク症状は成熟がおそい果実で発生が多いこと，果実重の大きい果実で重症化すること，ジベレリン処理で重症化すること，樹勢が強い樹で多発すること，また窒素を多施肥することでそれぞれ多発することがあきらかになっている。果実の貯蔵性は25℃で約14日であり，「豊水」と同程度である。

樹勢は強く，枝は太い。枝の色は淡緑褐色で，新梢の毛茸の量は中程度である。短果枝の着生は中程度で，腋花芽の着生は「幸水」より少ないと思われる。成葉の形は卵形で，どん葉は赤褐色を呈し，毛茸は少ない。開葯前の葯は淡紅色で「幸水」に似ており，花粉量は多い。結実性は良好であるが，自家結実性は低い。早期落果，後期落果ともにほとんど見られない。黒斑病，黒星病などの主要病害に対しては通常の防除で対応が可能で，とくに問題となる虫害も見られない。

枝が硬くてもろく，誘引のさいに折れることがあるので夏の間に予備的に誘引しておくとよい。大果であることから，台風の常襲地帯を中心に強風への対策を十分に行なうことが必要である。有てい果の割合が高いが，ヘタのない果実と比べて品質面での差異が認められないので，有てい果の混在はこの品種本来の特性と考えられる。果肉に発生する生理障害については，施肥や新梢管理による樹勢の中庸化に努めるとともに，適期収穫など基本管理技術の徹底が望まれる。

最近では、「幸水」「豊水」に続いて多く苗木注文を頂く品種。収量を上げるのが難しい品種のようで、「幻の梨」とも呼ばれていました。苗木の販売が人気なことから、栽培技術の進歩もあるのでしょう。私の大好きな梨の一つで、当り外れがなく毎年美味しくいただいております。

日本農業新聞が毎年１月に特集している「農畜産物トレンド」。果実売筋期待値ランキングが発表され、日本農業新聞が、全国のスーパーや生協、卸売業者などを対象に売れ筋商品の傾向を調査する。天候不順により品薄だった品種に対する期待度が上がり、上位にランキングされる傾向も一部あるが、おおむね小売店での販売実態を反映している。この調査から、消費者志向、消費者動向がかなり高い精度で分かることから、品種選定の大きな指標にしてよいと考える。
今年の資料は見つからなかったが、2010～2016年の間、「あきづき」は7期連続でナシ部門の1位にあった。また、全果実部門でも、2010年5位、2011年4位、2012年4位、2013年6位、2014年4位、2015年5位、2016年8位と「あきづき」への消費者の期待値は高い。

幼木期から多収性なので、改植しても無収益期間が短い。糖度は豊水、幸水並だが、酸味が少ないので、甘味を強く感じる。作りやすく、安定した品種として栽培面積拡大中。