貴秋　きしゅう

特徴

1984年に伊豆に安芸津5号を交雑して得た交雑実生から選抜された農研機構の育成品種。安芸津5号は富有×興津16号の交雑実生から選抜された完全甘ガキ。1996年よりカキ安芸津15号の系統名をつけて27都県29か所の国公立試験研究機関において栽培試験を行なって特性を検討した結果，有望と認められた。2003年に「貴秋」と命名され，2005年に品種登録された。

樹勢はあまり強くない。樹姿は開張と直立の中間である。結果母枝は太い。雌花の着生は多い。遅れ花は少し着生する。また，雄花をごくわずかに着生する。展葉期および雌花の開花期は「松本早生富有」よりやや遅い。

　生理落果は，早期落果（6～7月）は少なく，結実が安定している。後期落果（8月以降）は，全国の試験の結果，大半の場所でないか，あっても落果率は5％以下であった。したがって，通常の年ではほとんど問題とならないと考えられる。しかし，育成地（安芸津）では，収穫前に樹上軟化が発生した年があった。樹上軟化は後期落果の一種であると考えられるので，その発生には土壌水分との関係が示唆される。

「貴秋」は単為結果力が弱く，種子形成力が強い。授粉樹のある条件では結実が安定するので，開花期の合う授粉樹を栽植するとよい。なお，「貴秋」の種子は，「次郎」のように，果実発育後期には退化しやすい。

「貴秋」は，樹勢があまり強くないので，やや密植するとともに，強めの剪定がよい。枝の長さがあまり長くなく，下垂もしにくいので，剪定しやすい。雄花がわずかに着生するので，強めの剪定を行ない，強い母枝を確保するとよい。陰芽がよく発芽するので，側枝の更新を積極的に行なうとよい。

果実が大きいため，葉果比25～30程度に7月下旬の摘果を行なうとし，その1.5倍程度の花を残すとすれば，葉蕾比16～20程度の摘蕾をすることになる。

病害抵抗性はとくに問題はなく，富有に準じた防除を行なうとよい。なお，若葉における農薬の薬害は富有より発生しやすい。

「伊豆」と「松本早生富有」の中間の時期に成熟する早生で大果の完全甘ガキである。育成地（安芸津）における成熟期は10月下旬である。果形は扁平で，果実重は「富有」より大きく，育成地（安芸津）では平均350g程度である。「松本早生富有」は平均260g程度であり，これより100g近く大きい。

果皮色は赤く，果頂部のカラーチャート値6程度で収穫できる。大果で外観の良い甘ガキである。適熟果の肉質の粗密は「松本早生富有」に近いが，硬さは「松本早生富有」より硬い。糖度は中程度で，全国25試験研究機関の平均で15.1度であり，「松本早生富有」よりやや低い。果汁の量は多い。収穫後，数日すると，やや軟らかくなって食べやすくなる。

育成地では常温で15日程度日持ちし，「伊豆」より長く，「松本早生富有」より短い。へたすき果はほとんど発生しない。果頂裂果は微小なもの以外はほとんど発生しない。

汚損果は富有，松本早生富有と比べてやや発生しやすい。

「貴秋」は完全甘ガキであり，夏秋季の気温の高い地域に適応し，一般に富有，次郎栽培地域で栽培できる。松本早生富有よりやや渋残りしやすいので，気温の比較的低い地方での導入には注意が必要である。

条紋、へたすき、果頂裂果、汚損果の発生はほとんどない。食感は、「シャキッ」とした生果独自の硬さが特徴、柔らかい果実がお好みの方は、収穫後数日おく。夏秋期の気温の高い地域に適応し、東北以北など冷涼地域では渋が残る。サクサクした食感。種があまり入らない。

糖度の高さは誇れるが、果実重は中、果皮色も中と特に果実に特徴はない。

しかし、柿農家にとっては、裏切らない品種である。へたすき果、果頂裂果はほとんど発生しない、単位結果力強いので生理落下もしない。最後の最後まで裏切ら無い品種。

玉揃いが良い果皮色が赤く外観が良い上に、生理落果が少なく、へたすき性が小さい。名の通り秋の貴重品種。