岩崎早生　いわさきわせ

特徴

1978年（昭和53年）に長崎県西彼杵郡西海町の岩崎伝一氏が自園で興津早生の枝変わりとして発見したものである。種苗法による品種登録は行なわれていない。

樹勢は温州ミカンのなかでは中～やや弱いほうであるが，極早生温州としては強いほうで，「日南1号」よりやや弱い程度である。樹姿はやや立ちぎみで結実を開始すると開張してくる。枝の伸長は無結実のときは旺盛で強い春枝が立ちぎみに発生するが，結実を開始すると節間が短く密生した枝がでやすい。

樹勢が比較的旺盛であるため，苗木からの初期結実がおそくなることがあるが，「日南1号」ほどではない。着花数は多く，結実性は良好で隔年結果性はほとんどない。

果実の大きさは中位で，玉揃いが良い。果形は「興津早生」より扁平。9月中旬ごろから脱緑が始まり，9月下旬ごろから着色を始める。10月に入ると果頂部付近から色が濃くなり始め，橙色がでてくる。興津早生より2週間程度早く熟する。

油胞が小さく密で，突出していないため果面は滑らかであり，しかも果皮が薄い。

糖度は9月上中旬ごろまでは8度ぐらいであるが，下旬ごろになると9度程度となり，10月上旬には10度に達する。クエン酸濃度は，9月下旬に1％程度となり可食期に達する。10月上旬には0.9％となり，糖度も10度以上で着色も3～5分以上となり，食味も比較的良好となる。10月中旬には糖度が10～11度程度となり，クエン酸濃度は0.8％，10月下旬には糖度が11度前後，クエン酸濃度は0.7％と味ぼけしにくい系統である。

浮皮の発生は10月下旬ごろからみられ，収穫前に降雨が多かった年に多く発生する。特に，気温の高い地域では着色が不良で，着色し始めると浮皮が発生し，品質も低下する。

秋口の気温が高い地域では，着色がおそいうえ浮皮が発生し，果実品質が劣るので適していない。それ以外の地域では，秋口に高温とならず乾燥しやすい地域で，高品質の果実を生産できる。

極早生温州としては，樹勢は強いほうであり，特に無結実期間は生育旺盛で樹冠の拡大も良好であるが，結実を開始すると着花が多くなり春枝数が少なく，しかも短くなり樹冠の拡大が緩慢となる。収量を確保するためには，無結実期間に十分樹冠を拡大することが重要である。

今では苗木生産されなくなった1960年誕生の「宮本早生」が「秋の運動会の緑色の酸っぱいミカン」として幅を利かせていた時代の1978年、これは長崎県西海町で枝変わり新品種として登場し、極早生の全国区品種になった。育て易く、乾燥した気象条件に恵まれれば浮皮の発生無く露地で糖度１２度以上まで上がる。「宮本早生」と違い、甘い極早生みかんの始まりの品種である。「日南１号」より結果期に入るのが早い。乾燥した条件下での栽培には、今でも人気があり植栽される。