甘秋　かんしゅう　

特徴

1986年に新秋×18-4を交雑して得た交雑実生から選抜された農研機構の育成品種である。18-4は富有×興津16号の交雑実生から選抜された完全甘ガキの系統。1996年よりカキ安芸津14号の系統名をつけて25都県27か所の国公立試験研究機関において栽培試験を行なって特性を検討した結果，有望と認められた。2002年に「甘秋」と命名され，2005年に品種登録された。

樹勢は中程度で，樹姿は開張と直立の中間である。雌花の着生は多い。雌花の開花期は松本早生富有とほぼ同時期である。雄花を着生し，樹齢とともに雄花の数が多くなる。剪定にあたっては，弱い結果母枝は落とし，長い結果母枝のみを残すよう心がけ，強めの剪定を行なうとよい。陰芽が吹きやすく，側枝の更新は容易である。積極的に側枝を更新し，強めの新梢を出させるのがよい。

単為結果力が強く，また，種子形成力も強いので，早期落果は少なく，結実が安定している。後期落果（8月以降）はほとんど生じない。

このため，摘蕾を十分に行ない，果実の肥大を図るのがよい。甘秋の花は小さく，摘蕾時には，できるだけ大きい花を残すようにする必要がある。長大な新梢に結実した果実は小さい傾向がある。なお，果実肥大のためには夏季乾燥期の灌水が重要である。

病害抵抗性はとくに問題はなく，富有に準じた防除を行なうとよい。台風害に弱い傾向がある。

「伊豆」と「松本早生富有」の中間の時期に成熟する早生で糖度の高い完全甘ガキである。果形はやや扁平で，果実重は松本早生富有より小さく，「伊豆」と同程度である。果皮色はあまり赤くなく，育成地（安芸津）では果底部のカラーチャート値4になった時期を収穫期としている。

適熟果の肉質は緻密で，果汁の多さは中程度である。糖度は高く，育成地では，伊豆より2.8度，松本早生富有より1.5度高く，赤道部で18度程度であり，食味は良好。「富有」，「平核無」より明らかに糖度が高い。適期収穫が必要であり，収穫が早いと糖度は低下し，食味が優れない。果底部が青い果実は糖度・肉質ともに劣る。

果頂部は果底部よりやや早く成熟する傾向があり，糖度も高い。日持ち性に優れ，育成地（安芸津）では常温で16日程度日持ちする。全国の試験では平均15日，日持ちし，「伊豆」より長く，「松本早生富有」より短い。

へたすき果，果頂裂果はほとんど発生しない。

果皮に雲形状汚損の発生が多いのが欠点である。汚損果発生率は，全国27試験研究機関の平均値で40％であった。「甘秋」の親である「新秋」は，汚損の発生とともにその部位から軟化するが，「甘秋」はこのような軟化は発生しない。雨よけ栽培では汚損の発生が非常に少ない。降雨や日射が汚損の要因。

ここ福岡県の柿農家さんでは、どこでも人気急上昇。夏場の気温が高くなってから人気急上昇の品種。へたすき果の発生が異常なほど増えたここ九州地区においても、ほとんど捨てる果実が無い品種。果実の大きさが、巨大ではないのであまり目立たないが、食べればその糖度はほぼ２０度を超え、非常に甘い。見た目よりも果実はズシリと重く、果肉は詰まっており、目方がある。日持ち性も抜群で、暖地では一番の経済栽培品種と思われる。