なるみ　

特徴

農研機構果樹研究所において，1997年に162-29（新高×豊水）に269-21（豊水×おさ二十世紀）を交雑して得られた実生から選抜された。2007年から2014年まで系統適応性検定試験において検討した結果，果実品質が良好で，自家和合性であることが確認され，2015年に品種登録出願され，2016年に第25276号として登録された。

成熟期は9月上～中旬で，「豊水」と同時期。果形は扁円形で，果実の大きさは625gで「豊水」より大果となる。果肉硬度，糖度は「豊水」と同程度で，酸味は少ない。みつ症の発生は見られない。年により心腐れが発生する場合があるが，その程度は軽微。

樹勢はやや強く，枝梢の発生は中程度で「豊水」よりは少ない。短果枝の着生は多く，腋花芽の着生は中程度である。開花中央日は「豊水」と同時期である。S遺伝子型はS4smS5であり，自家和合性を示す。ただし，花粉は「幸水」などと交雑不和合性を示す。黒斑病に抵抗性であるが，黒星病に罹病性である。えそ斑点病に対しては病徴非発現性である。

１．人工受粉による自家結実率は68.3%であり、自家和合性を示す。無受粉での結実率も50%以上であり、人工受粉しなくても十分な結実が見込める。

２．自家和合性は「おさ二十世紀」由来の雌しべ側の変異によるもの。花粉側に自家和合化の変異は認められず、本品種の花粉は主要品種の中では「幸水」と交雑不和合性を示す。
３．樹勢は「豊水」と同程度。「豊水」と比較して、短果枝の着生は少な い。開花中央日は4月中旬で「豊水」と同時期。収穫中央日は9月上旬で、「豊水」と同時期。また、収量は「豊水」並み。
４．果実は重さが600g程度で、「豊水」より大果。果肉硬度は「豊水」と同程度で軟らかく、肉質良好。糖度は「豊水」と同程度、酸味は「豊水」よりやや少なく、食味良好。みつ症は発生せず、芯腐れはわずかに発生するが、程度は軽微。
５．「豊水」同様、黒斑病には抵抗性で、黒星病に対しては罹病性。黒星病が多発するとの報告があるので、十分な防除が必要。

ニホンナシの経済栽培品種は、「おさ二十世紀」を除き、自分の花粉では結実しない。よって、気象条件等が揃い、ミツバチが花粉を運んでくれる条件下では、人口受粉の必要は無い。但し、現実は「もしかしたら、ミツバチが花粉を運んでくれるかも。」では農業として成り立たない。よって、梨栽培に人口受粉は必須である。また、この作業は開花時の短期間に行う必要があるため、労働力を集中的に必要とし、ナシ農家にとってはやっかいな作業である。
これを解消した画期的な品種「なるみ」。自家受粉で「実がなる」ナシと云う意味で名づけられた。人口受粉せず、放任受粉での結実率は、花の総数に対して55.8%と、豊水の19.5%に比べ非常に高く、人口受粉の必要性が無いことが実証されている。但し、「幸水」と交雑不和合性で、「幸水」の受粉樹にはならないので、植栽計画する際注意が必要。
開花期、収穫期ともに「豊水」と同時期。円形の赤ナシで、果実重は600ｇ以上と「豊水」よりも大きい。果汁は多く、糖度は13.2度で「豊水」と同程度だが、「豊水」より酸味少ないので食味は良い。
「おさ二十世紀」で問題となった黒斑病には抵抗性を持っており、育て易い品種である。但し、剪定の切口、弱い小枝の枯れ込み部、害虫の食害部などの傷口から、黒星病が侵入するので、傷口にはペースト剤を塗布して侵入を防ぐこと。

ナシには1つの花に柱頭が5つある。受粉はこの5つの柱頭全てにしなければならない。1つでも受粉してないと、奇形果になる。受粉作業は、経験がいる作業。その経験を補ってくれる品種「なるみ」。