さくひめ

特徴

農研機構果樹茶業研究部門が2003年 に，296-16に332-16を交雑して育成した品種。296-16および332-16ともにブラジル から導入した低温要求量の少ない品種Coralの後代実生である。系統適応性検定試験が行なわれ，2018年に品種登録された。

これからの地球温暖化に向けて後手後手にまわってきた果樹苗木の育種。今回の「さくひめ」は、これから予想される気候変動の先回りをした画期的な育種事業である。

西南暖地では、早急に試験栽培に入りこれからの変化に対する果実品質等の確認も急ぐ必要を感じる。
他方、ハウス桃ではかなり前より問題視されてきた。長崎県では「沖縄系台木」を使用することで、低温要求時間を短縮する効果が得られ一部地域で栽培されているが、全国的な普及には至っていない。西南暖地におけるハウス桃の主流品種である「日川白鳳」と比べて、品質的にも問題ないようである。

樹勢は強く，樹姿は中程度である。花芽の着生は多く，枝の発生も多い。花粉を有し，自家結実性で結実は良好である。生理的落果の発生は少ない。「あかつき」，「日川白鳳」，「川中島白桃」などの主要品種の休眠打破に必要な低温要求量は7.2℃以下で1,000～1,200時間であるが，「さくひめ」は 555時間前後の半分程度である。開花期は育成地では日川白鳳より9日程度早い。収穫期は育成地では日川白鳳より5日程度早い6月下旬である。「低温要求時間が少なく西南暖地向け」ということを育種目的として作出され、各県での評価が出揃ってきたが、果実品質も高評価である。糖度は12～13程度、酸度は4.6程度で酸味は少なく「日川白鳳」と同程度で、食味良好。核割れの発生は少なく問題にはならない。

果形は円形から短楕円形，果実重 は250～300gとなり早生品種としては大きい。果皮の着色はやや多いが，年により裂果や果点 が発生することから有袋栽培が望ましい。核割れの発生は早生品種としては少ない。果肉は 乳白色，溶質で，粘核である。甘味は屈折計で 12～13％程度となり酸味は少なく，早生品種としては食味が優れる。みつ症（水浸状果肉褐 変症）の発生は少ない。 

地球温暖化に対応したこれからの品種。花芽分化に必要な低温要求時間が約半分しか必要ない。施設栽培においても休眠から目覚める為の時間が短く、早く加温できるので早出し桃としても優位。但し、沖縄県などでの栽培は不可能。