凜夏りんか

特徴

農研機構果樹研究所において1996年に269-21（豊水×おさ二十世紀）に‘あきあかり’を交雑して得られた実生から選抜。2007年から2012年まで系統適応性検定試験において検討した結果，食味が「幸水」程度で，とくに西南暖地で花芽枯死が少ないことがあきらかとなり，2013年に品種登録出願され，2015年に第23912号として登録された。

成熟期は8月中～下旬で，「幸水」の数日後から収穫される。果形は円形で果実重は500g程度で大果。果肉は「幸水」より軟らかく，糖度は13％程度，酸味は「豊水」程度で。みつ症と心腐れの発生がわずかに見られるが，いずれもその程度は軽微。日持ち性は「幸水」と同程度。

樹勢は「幸水」と同程度。短果枝の着生はやや多く，腋花芽の着生は中程度で，「幸水」よりも短果枝の着生が多く，花芽の確保は容易。開花期は「幸水」と同時期。S遺伝子型はS1S3であり，主要品種とは交雑和合性を示す。若木の収量は「幸水」と同程度。黒斑病抵抗性で，黒星病には罹病性であり，通常防除で対応可能である。えそ斑点病に関しては病徴非発現性である。

酸味が「豊水」程度であるので，適期収穫を心がける必要がある。場所によってはみつ症や裂果が多発する場合がある。鹿児島県をはじめとした西南暖地では，主要品種の花芽枯死が年によって問題となっているが，本品種はその発生が少ないので，これら地域での早期普及が期待される。

「幸水」の収量減を引き起こし、農家を悩ませている発芽不良「眠り症」。これは昨今の異常気象の秋・冬季の高温で花芽が早く目覚め、生育不良や枯死につながっている。
佐賀県の報告によると冬季（１２～４月）の最高気温が20度近くまで上がった園地で、睡眠途中に起こされて寝坊する人のように開花が遅れるそうだ。また、秋季（９～１１月に３０度近くまで上がった場合も、花芽自体の「耐凍性」が弱まり、厳寒期に枯死しやすくなる。
そこで、農研機構は、暖地でも花芽が安定的に着生することで安定生産を可能にする品種を育成した。「幸水」とほぼ同時期に成熟し、「幸水」と比べ、大果で、果肉軟らかく、糖度はほぼ同程度。但し、少し酸味を感じるので栽培方法の確立が必要。

改植事業として、「幸水」の後に「幸水のジョイント栽培」導入が多いようだ。暖地では、改植事業を期に新品種の導入を考える時代になったのでは。雪深い鳥取県などでも、眠り症に対する危惧観念を持つ農家がでてきた。逆に、埼玉県では同症状は見られないので、「凛夏」導入の必要無しとの見解もある。

収量は「幸水」と同程度ある。果実重は450ｇあり、「幸水」より大きい。糖度は「幸水」と同程度であるが、硬度が低いため、食味は「幸水」より良い。日持ち性も14日で「幸水」より長い。開花後１ヵ月で適度に落果するため、摘果の省力化が期待される。よって、作業面では基幹品種である「幸水」や「豊水」を優先させ、それらの作業が一段落した後に「凛夏」の摘果を行なうことができるので、労力分散が可能。