王秋おうしゅう

特徴

農林水産省果樹試験場が晩生の品質優良な赤ナシ品種の育成を目的として，1983年にC2に‘新雪’を交雑した。C2は果樹試験場で‘慈梨’に‘二十世紀’を交雑して育成した中国ナシとニホンナシとの種間雑種である。系統適応性検定試験の結果，成熟期が「新高」よりおそく「晩三吉」の少し前に収穫できる，果実品質が優れた大果で晩生の赤ナシ系統としての特性があきらかになり，2000年になし農林22号として命名，登録のうえ公表され，2003年に第11118号として品種登録された。

果実の成熟期は「新高」と「晩三吉」の間で，10月下旬から収穫できる。果実の形は円楕円形であるが，果実の最大径が赤道部より，ていあ側に寄っている倒三角形を呈する果実も多数混在する。平均果重は約740gで「晩三吉」と同程度の大きさである。果皮の色が黄褐色で，果面は滑らかである。果肉は雪白色で軟らかく，緻密である。屈折計示度は12.1％で，晩生品種としては高糖度である。酸味はpH4.4であるが食味は良好である。渋味はなく，中程度に香気が感じられる。心腐れ，みつ症の発生は少なく，裂果はない。果実の貯蔵性は長く，約28日以上の日持ち性が認められる。

樹勢は強く，枝梢は太くて長い。枝梢は濃茶褐色である。短果枝の着生は多いが，腋花芽の着生程度は中である。成葉は長楕円形で大きく，幼葉は赤褐色で毛茸が多い。開葯前の葯の色は濃紅色で「二十世紀」に似ており，花粉の量は豊富である。開花期は「豊水」と「幸水」の間であり，S遺伝子型はS4S5で「幸水」などと交雑不和合性である。結実性は「新高」と同様に多いが，自家結実性は低い。早期落果はほとんど認められないが，後期落果は多い。黒星病などの主要病害に対しては通常の防除で問題はなく，とくに問題となる虫害もみられない。

樹勢が強く，枝の発生密度は多くないが短果枝の着生が多くて維持も容易であり，短果枝利用型の品種である。成熟期に近づいてからの果色変化が小さいので，収穫適期を慎重に判定する必要がある。年次によって果肉内に褐色斑点状のコルク症状が発生することがあり，ジベレリン処理によって重症化すること，大果であるほど発生が多くなる傾向があることがあきらかになっている。また，土壌硬度と症状発生に関連が認められ，深耕を実施して硬度が軟化した園地では，多くの細根の発生が認められ，障害の発生が大きく低減したとの報告がある。収穫前落果が発生しやすいので早どりになりがちであるが，品質が劣るので避ける。収穫前落果に対しては落果防止剤の効果が確認されているので散布することが望ましい。

ジャンボで高糖度の晩生品種。販売期間を長くするために晩生品種を植えられる予定があれば一押しの品種。