梅郷　ばいごう

特徴

東京都のウメ産地，青梅市産の種苗登録品種が，「玉英」に次いで2番目の品種である。「玉英」育成地の対岸にある吉野農協管内で発見された。発見に至る経緯は，農協のウメ試験地の片すみに生えていた実生と思われる樹が毎年結実がよいのを管理者の青木就一郎が着目し，1961年に同氏は地名をとって梅郷と命名し登録申請した。1969年種苗名称登録された。

樹性，果実の特性などの調査から両親不明の実生樹として登録されたが，同地方の実生樹と思われる多くの優良系統のパーオキシダーゼアイソザイム分析の結果，本種は同地方に栽培の多い「小向」と同じ，アンズとの雑種群に該当した。このことから，「小向」の実生と推定されている。

樹勢は強い。主枝などの先端枝は太く長いが，中・長果枝はやや細い傾向がある。成木の樹姿はやや開張性を示す。結果枝の発生は多いが，短果枝より中・長果枝が多い。枝の色は「白加賀」や「小向」より緑色がやや濃い。葉は楕円形で，白加賀より細長い。葉の先端は細長く尖っているが，白加賀のように曲がらない。不完全花の発生は少ない。雌ずいの曲がりは少なく，完全花が多い。

開花期はやや遅いが，白加賀や「玉英」，「小向」よりは数日早い。暖冬年はやや早まる傾向がある。自家結実性は高くなく，単植では結実不良である。花粉のほとんどない品種との混植では第2の授粉樹を植える必要がある。果実は短楕円または卵円形で果頂部はやや尖る。

果実は大きい。結実が多いと小果になる傾向がやや強いので，豊産のときは摘果する必要がある。果皮色は淡緑色で毛茸は密であるが，色が明るく美しい。陽光面の着色はほとんどない。果汁率が高く梅酒用に好適である。熟果の梅干は皮が破れやすい傾向があり，早めに収穫するとよい。核は果実が大きいわりに小さく，核の着色は早い品種である。核の果梗部は細く，頂部の先は尖っていて，品種特有の形状を示す。核の着色は早いが，果実が光沢を帯びる収穫の適期は遅く，黄化の遅い品種に属する。果実は白加賀，玉英，小向によく似ているので混合しても見劣りはしない。やに吹き果の発生は少ない傾向である。

「梅郷」は梅酒用に適している。「白加賀」や「玉英」を青どりするウメ園で授粉樹として利用したい品種である。関東地方の山間傾斜地では開花期がよく合致し，結実安定に好成績をあげている。

核は実が大きいわりに小さく、果汁率が高いので梅酒用に好適。熟果の梅干は皮が破れやすいので、早めに収穫すると良い。「白加賀」や「玉英」の受粉樹として利用したい品種。