BN２１号　　　

特徴

　　「長崎早生」よりも寒害リスクが少なく、品質はほぼ同等の早生品種「BN21号」が開発された。

　「BN21 号」は旧長崎県果樹試験場において、主要品種の中で果実は小さいが最も食味が優れる「長崎早生」に早熟、大果でビワがんしゅ病に比較的強い「涼峰」を1997年に交雑して作出した実生の中から選抜、育成。

　2004年に果実調査を行った結果、「長崎早生」より大果で食味が優れることから二次選抜し、2005 年に開始されたビワ第 4 回系統適応性検定試験にビワ長崎21号として供試し、10カ所において地域適応性の検討が行われた。

　2014年度から農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業により長崎県、千葉県、香川県、鹿児島県において耐寒性などを中心に地域適応性を検討した結果、瀬戸内地方、九州北部地方および九州南部地方では露地栽培での有望性が明らかになり、2015年に新品種候補に決定し、2016年に品種登録出願された。

　露地栽培では 5月下旬で、「長崎早生」と同等である。満開期から熟期までの日数である成熟日数は、施設栽培では 125日で「長崎早生」と同等であるが、露地栽培では 144日で、「長崎早生」より約 1ヶ月短い。

　果実の大きさは施設栽培では約57g、露地栽培では約50gで、「長崎早生」より大きい、「BN21号」の耐寒性は「長崎早生」より高い。耐寒性を評価するために長崎県における2009年産から2018年産の幼果の耐寒性(生存果率)は、年により大幅に変化し、2011、2012、2013年の寒害発生年では 「BN21号」は「長崎早生」より耐寒性が高く、「茂木」よりは劣るが「なつたより」とは同程度であった。

　果汁の糖度は12.5～15.9と高く、同じ場所で比較すると施設栽培より露地栽培が高い。

　育成地における付傷接種試験および露地栽培における圃場抵抗性付傷接種による検定の結果、ビワがんしゅ病Cグループ菌に対しては罹病性であるが、AおよびBグループ菌に対して抵抗性である。圃場における抵抗性は、「なつたより」および「涼峰」と同じくやや強であり、弱の 「長崎早生」および「茂木」より強い。「BN21号」は全国のビワ産地のある試験地において食味の評価は高く、「長崎早生」と同程度かそれ以上の果実の大きさであり、 「長崎早生」とほぼ同時期に成熟する早生であることから多くの場所から優秀性が認められた。施設栽培では、主力品種である「長崎早生」とほぼ同時期に成熟するため、労力分散ができず導入のメリットが少ない。