太豊　たいほう

特徴

来歴　農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門で育成された完全甘ガキ品種である。晩生で食味の良いカキ興津20号（ロ－19）に，大果でサクサクとした食味を有する中生の太秋を交雑して育成した実生のなかから選抜された。

樹性・着花・結実性　樹勢は中程度で，樹姿は直立と開張の中間である。展葉期は松本早生富有や富有とほぼ同時期である。雌花開花期は松本早生富有より早い。雌花の着生は多く，雄花は着生しない。全国26か所の国公立試験研究機関における試作試験でも，雄花の着生が認められた場所はなかった。種子の入らない条件下での結実力（単為結果力）が高いため，授粉樹を混植しないと結実が不安定になる富有とは異なり，授粉樹を混植しない条件下でも安定して生産できる。種なし生産も可能であるが，種なし果の生産には周囲に授粉樹がない環境が必要である。摘果後の落果性を示す後期落果性はほとんどない。

　太豊は，上記の試作試験において九州などの西南暖地においても年次や場所によりわずかな渋残りが生じたが，全国平均では富有および松本早生富有との有意な渋残りの差は認められなかった。導入の際には地域によっては渋残りに留意する必要があるが，夏秋期の温度が高い富有の栽培地域ではおおむね栽培できると考えられる。太豊は雌花が多く，単為結果力が高いため早期落果が少なく，後期落果もほぼ生じない。このため往々にして着果過多になりやすく，過度な着果は結果母枝の弱小化を招くことになる。着果過多にならないよう，富有に準じた着果制限を励行する必要がある。

果実特性　晩生の完全甘ガキであり，果実の成熟期は富有と同時期である。育成地における果実重は340g程度で松本早生富有や富有より大きかったが，全国26か所の試作試験における平均値では富有並みとなった。富有よりわずかに丸みを帯びた果形になり，果実側面に生じる側溝はない。収穫時の果皮色は富有用カラーチャート値で6程度となるが，果皮色は熟度が進んでも富有ほどには赤みを帯びず，果皮の色調は富有とはやや異なる。糖度はほぼ富有並みである。果肉肉質は粗と密の中間で富有と同程度である。果肉硬度は富有よりやや低く，果汁は多い。太秋ほどではないがサクサクとした食感を有しており，また柔軟多汁で食味は優れている。授粉樹を混植した場合の平均種子数は3個程度で富有より少ない。常温での日持ちは30日程度と富有並みであり，日持ちは優れている。果頂裂果はなく，へたすき果も松本早生富有より少なく，富有並みである。汚損果の発生は富有より多い。太豊に生じる汚損は，果実表面に不規則に微小な亀裂が生じることにより発生する破線状汚損であるが，軽微なものが多く顕著な黒変には至らない。

生産状況　太豊は2015年に品種登録されたばかりであり，現在のところは大きな産地形成には至っていない。富有と同時期ではあるが食味が異なるため，今後甘ガキ産地を中心に普及が見込まれる。

夏秋期の気温が高い地域に適応している完全甘柿の無核品種ということで、宣伝効果抜群、鳴り物入りで発表された新品種。よくよく発表の文面を読んでいくと、単為結実させて種無果実にする条件として、近隣に雄花が咲く柿の樹が存在しない環境を用意しなくてはならない。つまり雄花を着けない富有柿だけの園に植えつければ無核果の生産が可能である。しかし、富有は自家結実しないので、富有畑には一般に禅寺丸や赤柿などの受粉樹を植えているので富有畑を全伐採及び近隣の柿農家にも受粉樹の伐採という協力を仰がなくてはならない。
　現実問題、上記条件は不可能と思われる。「周りに柿園がなく、新植であれば無核栽培可能。」という言葉に置き換えられるのではないであろうか。試験的な栽培は、是非していただきたい品種であるが、本格的な植栽に関してはこれから発表されるであろう現地での報告を待つべきと考える。試験栽培され幣社に情報をいただければ幸いです。

ある方から「オルトラン」にはミツバチを近づけない効果があるので、開花時期に「オルトラン」を散布すると受粉することができないので、無核になるという手法だそうだ。彼も詳細は分からないとのことだったが、理論的には成立するような気がしたので検証してみた。
まず「オルトラン水和剤」はカキで、登録農薬がとれていた。又、その使用上の注意点とし以下の記載があった。
＊ミツバチに対して影響があるので、以下のことに注意することとあった。
（１）ミツバチの巣箱及びその周辺に飛散するおそれがある場合には使用しないこと。
（２）受粉促進を目的としてミツバチ等を放飼中の施設や果樹園等では使用をさけること。
（３） 関係機関（都道府県の農薬指導部局や地域の農薬団体等）に対して、周辺で養蜂が行われているかを確認し、養蜂が行われている場合には、関係機関へ農薬使用に係る情報を提供し、ミツバチの危害防止に努めること。
このことより、散布時期、回数によっては害虫防除とあわせ上手く使えば、受粉回避の可能性はあると思われた。
但し、試験使用されたり、その効果のデータがあるわけではないので、自己責任の元、試験ください。

「太豊」は、良食味で、種なし果の生産が可能な晩生の完全甘柿。「太豊」の果実は「富有」並みかそれ以上に大きく、「富有」とほぼ同時期の11月上中旬頃福岡県で収穫。果肉は柔軟多汁で、「太秋」のようなシャキシャキとした食感が特徴。雌花が多いうえ、受粉樹を周囲に混植しなくても早期落果が少なく、後期落果もしないため、種なし果の生産が可能。
初収穫は11月6日。慣行栽培園での高接樹からの果実写真。収穫２果中１果は無核、１果は１種子であった。これより、慣行でも少種子栽培は可能と思われる。

　単為結果力強く、他品種と受粉しなければ、種無果となる。収穫時期、糖度、果重は富有並。果頂裂果はほとんど発生せず、へたすき果についても富有並。夏秋期の気温が高い地域に適応。