陽豊　ようほう

特徴

来歴　ごくまれに生じた次郎の雄花の花粉を用い，富有に次郎を交配し育成した交雑実生のなかから選抜された農水省果樹試験場（現独立行政法人農研機構果樹研究所）の育成品種である。1983年より安芸津6号の系統名で35か所の国公立試験研究機関で系統適応性検定試験が実施された。その結果，優秀性が認められ，1991年に品種登録された。

樹性，着花・結実性　樹姿は開張性であり樹勢は中位。萌芽・展葉期は，カキ品種のなかではおそいほうであり，富有とほぼ同時期である。傷口の癒合性，陰芽からの新梢の発生のしやすさは富有並みである。雌花はつきやすく，隔年結果性は小さい。遅れ花をやや着生する。雄花は着生しない。開花期はカキのなかではおそく，富有とほぼ同時期である。

　単為結果性が強く，富有並みの摘蕾（葉蕾比13程度）を行なうと，無核でもほとんど早期落果はない（安芸津）。種子形成力も中程度なので，受粉されればさらに結実は安定するが，種子が形成された果実は果頂部の花柱痕部が黒くなったり，小さな果頂裂果を生じたりするので受粉しないようにして栽培するのがよい。無核果は果頂部が扁平になる。

　後期落果性はない。

　ほぼ同時期に成熟する松本早生富有より樹勢が強く，着花・結実も安定しているため，栽培しやすい。

果実特性　一般に11月上旬が収穫期（安芸津）の中生の完全甘ガキ品種である（第5図）。果実重は一般に280g程度であり，富有並みである。果皮は赤く，果頂部のカラーチャート値は7～8になる。カラーチャート値6程度で収穫すると果肉が硬く食味が劣るが，その後，やや軟化した時期が食べごろとなる。果実の表面がやや凸凹する特徴がある。溝はない。甘味は富有よりやや高く，赤道部の糖度は17度程度である。肉質は緻密であるが，果汁が富有より少なく，やや軟らかくならないと果汁が多くならない。そのため，初期より果汁の多い富有がかなり硬い時期から食べられるのに対して，可食適期の幅が短いといえる。果肉の褐斑は富有よりやや少ない。

　脱渋性も富有並みであり，適地は広い。へたすき性が少しあり，松本早生富有並みである。チャノキイロアザミウマの被害を受けやすいので適期の防除が必要である。単為結果性が高く，開花期の防除を行なうとよい。

生産状況　岐阜県などで数ヘクタールの栽培がある。

福島県など北の地域で栽培しても、渋が残らないことから寒冷地での優良品種とされてきた。しかし、この地球温暖化の気象条件下でも、「へたすき果」が発生しないことが分かり、ここ福岡県での栽培面積も拡大中。

ここで、その魅力について。着蕾が多く、着果が多く安定している。その上生理落果が少ないので多収に結び付く。受粉も不必要で種が入らない。逆に人口受粉をして種子を多くすると果頂裂果を起こすので、受粉作業は行わず無核の生産とする方が良いので手間いらず。早生種の中では大玉なので、収穫作業も軽減される。摘蕾を徹底し、大玉果生産に取り組んでもへたすきの心配はない。赤くなっても軟化しないので、いつまでもシャリシャリ感があり、日持ち性がよいので、小売りサイドにて非常に売りやすい。栽培上の留意点をあげると、摘蕾を徹底する、オルトランでスリップス防除、潅水は早めに。これらがポイント。

　生理落果が少なく豊産性である。へたすき果がほとんど発生しないので、生理落果が少なく豊産性である単為結果力が強いので、他の品種を近くに植えずに単為結果させ、無核の栽培を目指す。